未経験から“唯一無二”のエンジニアに。
前例のない仕事に挑み続ける。
中逵 祐真 YUMA NAKATSUJI
《プロフィール》
前職は、飲食店の店舗運営をはじめ、製造や工事などさまざまな仕事を経験。現在は半導体製造装置メーカーで、工程改善業務を担当。
30歳でキャリアチェンジし、エンジニアの道へ。
中学生の頃の夢は「自分の家を建てること」でした。ものづくりに興味があり、高校では美術コースに進学。さらに、料理も好きだったので「いつか自分の店を持ちたい」と考え、高校卒業後は飲食店に就職しました。アルバイトも含めて6年間働き、そのうち3年間は店長として店舗運営を任されました。その後、知人の紹介で製紙工場での製造・販売やシーリング・防水工事の現場など、さまざまな仕事に挑戦。当時は「体力が続く限り挑戦してみよう」という気持ちで、幅広い業務を経験していましたね。
エンジニアに興味を持つきっかけとなったのは、20代の頃から使っていたiPhone。自分で多様なアプリを作れることや、iPhoneそのものの機能やシステムが進化していくことに面白さを感じ、次第にソフトウェア開発に惹かれていきました。そして少しずつ、「エンジニアになりたい」という思いが強くなりました。
ちょうど30歳を迎える頃に転職を考え、未経験の分野に挑戦するなら今が最後のチャンスだと感じ、「今やらないと後悔する」と決意。ハードウェア・ソフトウェアの区別なく、エンジニアを目指すことにしました。
転職活動では複数の会社を受け、その中の1つがビーネックステクノロジーズでした。勤務地や条件が自分の希望に合っていたことに加え、面接で疑問点を率直に伝えた際、素直に答えてくれた姿勢が印象的で、入社を決めました。
現場をつなぎ、要望をくみ取り、スピーディーに成果を出す。
現在は半導体製造装置メーカーで、半導体洗浄装置の工程改善業務に従事しています。半導体は「シリコンウェーハ」という丸い板の表面に回路を焼き付けることで作られるのですが、ウェーハに少しでも汚れがあると回路に欠陥ができてしまいます。洗浄装置の役割はウェーハに不具合が起きないように超微細な汚れを除去することです。
こうした装置は安定的かつ効率的に稼働させていかなければなりません。そのために大切なのが、作業工数と品質の管理・改善です。具体的には、不良発生率のデータをもとに現場や社員から改善の要望を聞いたり、実際の工程を見たりして対策を提案します。必要があれば、CADを使って自分で治具を設計・制作をすることもあり、ある業務フローを見直した際には、大幅な改善効果を上げることができました。
私の業務は、さまざまな部署と連携しながら問題の原因を探り、改善していくことが重要となります。例えば、ある部署で改善のために行ったことが、別の部署ではマイナスの影響が出てしまうことも。そうした状況下で部署間のコミュニケーションがおろそかになると、情報の伝達が遅くなり、業務が滞ってしまいます。そこで、私が間に入ってやりとりすることで、期待される効果をより早く上げることにつなげています。
実はこの業務は、配属先の社内では比較的新しい仕事なんです。前例がほとんどないからこそ、これまでの自分の経験を活かして、イチから仕事をつくっていきました。初めは地道な取り組みからのスタートでしたが、徐々に認知され、今では「ここをもっと改善してほしい」と相談を受けることも増えています。私の性に合っている仕事だと感じますし、私の適性を見てこうした業務を用意してくれた就業先には、とても感謝しています。
大切なのは、経験を活かし新しいアイデアをどう生み出していくか。
私自身は未経験からエンジニアの仕事を始めるにあたっては、CADを習得したほか、最初に担当した業務でAIに触れたことを機に「G検定※」を受験しました。CADや半導体についての知識は、基本的には独学でしたが、いろんな部署の方に疑問点を聞きながら学んでいきました。そういう意味では、飲食店で培ったコミュニケーション能力や、製紙工場でのプロセスの改善など、これまでの業務で培ってきたスキルや経験が現在も活きていると感じますね。
※AI・ディープラーニングの活⽤リテラシーを習得するための検定試験
半導体エンジニアの仕事を2年間続けてわかったのは、この分野はおそらく「誰でも挑戦できる領域である」ということ。もちろん、突き詰めればいくらでも深掘りすることはできますが、仕事としてはある程度マニュアル化されています。また、顧客が求める仕様に合わせてオーダーメイドで作っていくので、実は機械化できる部分が少ないんです。だからこそ、これまでの経験をどう活かして、どう新しいアイデアを生み出すかが大切になってきます。そこが半導体分野の面白さであり、魅力ではないでしょうか。
今後の展望としては、業務の属人化を防ぐため、私と同じような役割を担える人をもっと増やしていきたいです。また、より効果的なAIプロンプトを作れるようになりたいと考えていますし、ゆくゆくは工場などの生産工程の自動化を図るFA(ファクトリーオートメーション)の領域にも挑戦してみたいですね。
取材日:2024.8.22